グループホームみらい
社会福祉法人昴
家族による医療行為はなぜOKなのか
違法性の阻却(そきゃく)
医師法第17条により、医療行為は医師の業務独占とされています。また、保健師、助産師、看護師又は准看護師は医師の指示により「診療の補助」として行うことができます。
それでは、なぜ家族は日常的に医療的ケア(医療行為)をしてもOKなのか。
平成17年に厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会協議会(中医協)から「医事法制における自己注射に係る取り扱いについて」という文章が出ています。
結論としては、「家族による医療行為は違法だが、一定の条件を満たしていれば違法性が阻却される」と考えられます。
1 医行為について
医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」
医業とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼす恐れのある行為(「医行為」)を、反復継続する意思をもって行うことです。
したがって、医師の業務独占とされている医行為は、看護師など一定の範囲で医師の業務独占を解除された有資格者が行う場合を除き、医師以外の者が医行為を行うことは原則として認められません。
看護師の業務
看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」です(保健師助産師看護師法第5条)。主治医または歯科医師の指示があった場合のみ、「診療の補助」として医行為を行うことができます(保健師助産師看護師法第37条)。
2 患者自身が行う医療行為について
「医師法の趣旨」と「違法性の阻却」
たとえ患者本人による医行為であったとしても、医師法に照らして考えてみるとやはり「違法」ということになります。
しかし、「公衆衛生上の危害を防止することを目的」とする医師法の趣旨に照らし「違法性が阻却」されます。
3家族が行う医療行為について
違法性阻却の条件
医師法違法だが、患者と特別な関係にある家族が行う場合には下記の条件を満たしていれば違法性が阻却されます。
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目的が正当であること(患者の治療目的であること)
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手段が正当であること(医師の判断に基づき、十分な患者教育、家族教育を行った上で、適切な指導及び管理の下に行われること)
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法益侵害(危険の発生)よりも得られる利益(患者の通院負担の解消)が大きいこと
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法益侵害の相対的軽微性(侵襲性が比較的低いこと、行為者は患者との関係において家族という特別な関係にある者に限られていること)
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必要性・緊急性(医師が必要と判断していること。患者の通院負担を軽減する必要があると認められること)
この条件は「インシュリンの自己注射について」書かれたものですが、家族による他の医行為についても、同様の理由で違法性が阻却されると考えられます。
参考文献
2018(平成30)年1月27日作成